コーチング研修のあり方

昨日、ある方と話をする中で「コーチング研修をうけたんだけど・・・」という話題になった。

話をうかがうとだいたいこんな感じである。

・コーチングの研修を1日だったか2日だったか受けた。
・だが、結果が出なかった。
・そのためコーチングの考え方ではなく、より厳しくしなければ、という方向に社内が動いている。

それはそうだろう。

1日や2日の研修を受けただけでコーチングができるようになれば誰も苦労しない。
できるわけがないことをして、ダメと判断してしまうほどもったいないことはない。

コーチングの基本的な考え方は以下の通りである。

・「自主性」「考える力」「コミュニケーションの力」を育てる。
・それを通して、人が本来持つ力を引き出す。

実現するために、以下のようなスキルを身につける必要がある。

・傾聴、観察のスキル
・伝えるスキル
・問題発見のスキル
・質問(課題)のスキル

それに加えて、待つことができるような本人の意識の変革も求められる。

これだけのことを1日、2日でできると思うほうがどうかしている。
私が行うコーチングの研修は、例えば次のようなものである。

・月に一度の集合研修を行う。
・それを半年間(六ヶ月)続ける。
・研修の間には自主的に宿題を決めてもらう。
・次回にそれの振り返りを行う。
・研修の内容では、受講者の現場で起きている問題を課題に使う。

このような流れの研修で、理解をし、腑に落ちて、具体的な行動の変化に表れるところまではたどり着ける。
ただ、スキルとして使いこなすことができるようになるまでは、研修後に繰り返し練習することが必要なので、その「継続した練習」の意識を持たせるために、しつこいぐらいの意識付けを行う。
頻度や期間はクライアントの担当者と相談しながら、可能な範囲で最大限の効果を得られるような研修を考えるので、この流れはあくまでも一例である。

このような研修でも、全員がコーチングのエキスパートになれるわけではないが、全体としてそれなりの成果が出てくるのではないかと考えている。
コーチングは魔法の杖ではない。
きちんとした心理学をベースとした理論の上にできている方法論である。
だから、しかるべき手順で学べば学べる。
箱根駅伝で圧勝の青山学院、大学ラグビー全国大会で7連覇の帝京大学、ラグビーワールドカップで素晴らしい成績をあげた日本代表。

これらはすべて、育成についてコーチングの考え方がベースにあり、その成果が出ているものだ。
コーチングの考え方は、人を育てるために普遍的なものであり、普遍的であるからこそ非常に強力である。

それを、学び方が悪いために捨ててしまうことがどれほどもったいないことか。
コーチングの考え方を通して組織を強くしたいと思うのならば、きちんと学べる研修を選ぶ必要がある。

まちがっても「コーチング研修1日」などというのは「知るだけのもの」でしかないので、選んではいけない。
期間が長ければよいというものではないが、最低限必要な日数というのはあるだろう。

また、知識ではなく気付き、暗記ではなく訓練を重視する研修を選ぶことをお勧めする。
昨日、コーチングのまずい学び方により、コーチングを学ぶ機会を失った人達がいた(実はこれが驚くほど多い)話を聞き、悲しくなってしまった。

教える側として、教えることを目的にしていてはいけない。
学んでもらい、学んでもらった結果としてクライアントの人生が良くなること、以外に、教える側の目的があるはずはないのだ。

研修を行い、コーチングを誤解して見切りをつけさせ、よくない方向に進ませてしまうことは、本来の目的から考えればあり得ないことである。
そのような研修は、教える側にいる人間として、してはならないことではないかと考える。

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