解釈

人間はいろいろなことに対して解釈をする。

予選プールで3勝しても決勝トーナメントに進めなかった、2015年のラグビーワールドカップの日本代表の活躍は素晴らしかったが、この躍進にも、さまざまな「解釈」が出てくることだろう。

例えば、今回の大会での1つのキーワードにもなっている「ハードワーク」であるが、これを元に、きつい練習を押しつければいい、という解釈が出てくるかもしれない。

「マインドセット」という言葉も使われているが、これに対して「勝とうと思わない者はだめだ」などという解釈が出てくるかもしれない。

トライにつながったサインプレーを見て、「やはりサインプレーを教えないとだめ」という解釈もありそうだ。
もちろん、それぞれが間違っているとは思わない。

今回のワールドカップでの活躍のベースには「勝つ、勝てる」という「マインドセット」、世界に通用するフィットネスを身につけるための「ハードワーク」があったのも確かであるし、見事なサインプレーでトライをもぎ取ったのも間違いない。

だが、解釈というのは往々にして「自分に都合よく」なされることに注意が必要である。
マインドセットを作るためにどれぐらいの努力と時間をかけたことか。
それを理解することなく、「勝とうと思え、思えない者はだめだ」と言うだけの指導者が「マインドセット」をいくら連呼しても意味がない。
だが、自分の言っていることを正当化するために「マインドセット」という言葉を解釈してしまう。

モチベーションを引き出せないまま、きつい練習を強制するだけの指導者が「ハードワークが必要だ」というのも同じようなものだ。

サインプレーを活かす、フィットネスやディフェンスのスキルをおそろかにしてのサインプレーの練習などは本末転倒も甚だしいが、「サインプレーは大事」という解釈をすればそれも正当化されてしまう。
大切なのは、自分に都合のよい、自説を強化するような解釈ではなく、きちんとした分析なのだと思う。

「マインドセット」を変えるために、現状を認識させ、どうやったら変えられるかを考えて時間をかけてそれを実現してきた。

「ハードワーク」に向かうモチベーションを作り上げ、そのハードワークの結果を実感させることを通してさらにハードワークに向かうモチベーションと自信を高めてきた。

「サインプレー」を活かすための、フィットネス、ディフェンススキル、コミュニケーション力を高め、どこで使うべきかの判断をする判断力を身につけさせるための練習をしてきた。

これでは、とうていおおざっぱすぎて分析というようなものではないが、1つ1つのことをきちんと考えなければならない、というのは分かってもらえるのではないかと思う。

そして、指導者としては、分析して得た結果を受け入れて着実に実施する、スキルと粘り強さが必要になるはずだ。
などと書いてはいるが、油断すれば勝手な解釈をしてしまうのは私も同じである。
だから、常により多くの視点から見て考えることを意識し続けたい。

解釈ではなく分析を。

自戒を込めて。

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