ラグビー南アフリカ戦

2015年9月19日。

ラグビーのワールドカップで日本が南アフリカに勝った。
それがどれぐらいすごいことなのかは、さまざまなメディアやブログ、SNSなどで取り上げられているから、今さら言うこともないだろう。

私はそのゲームをLIVEで見ていて、勝った瞬間、いや、最後のペナルティーでスクラムを選択したときから涙しながら見ていた。

勝ったこともすごいが、それよりも、前回のワールドカップからの4年間の血のにじむと言うような表現では全く足りないだろう努力を続けた選手達に対して涙が出た。

以前はどんなゲームでも最後には足が止まり、好き勝手に走られトライを取られていたのに、今回は最後にペナルティーからトライを取るという判断をできるほどの力をつけたのだ。
どれほどの練習をし、その練習がどれほどの自信を持たせたのか。

ボールのハンドリングのミスもほとんどない。
やってみると分かるが、高速で飛んでくる楕円球を、相手とぶつかるというプレッシャーの中で自由に扱うというのはなかなかにむずかしい。
よっぽど練習をし、集中力を持っていなければ、あれほどのハンドリングはできないだろう。

さすがに中3日のスコットランド戦では集中力が切れていたようだが、それでも最後まで戦い続けていた。
これも「ハードワーク」と表現される厳しい練習の成果であるのは間違いない。
このようなゲームを見て、我々、子どものラグビースクールのコーチは何を学ぶべきであろうか。

我々が目指すのは、常に、将来のワールドレベルのゲームを楽しめるような選手だ。
「どうせ子どもが相手なのだから、自分が知っていることを教えておけばいいや」
ではだめである。

子どもの可能性を狭めてしまうからだ。

最高のゲームを見て、それを分析し、担当している子どもに適したスキルを与えなければならない。

例えば、スペースを見つける力、規律を守り粘り強く頑張る力、ボールのハンドリングスキル、自分の身体をコントロールする調整力、長い時間走れる持久力、相手を捕まえられる筋力、瞬間的な判断力などである。
さらに言うならば、スポーツを好きで楽しいと思う気持ちも欠かせない。

それらをきちんと身につけさせることができれば、子どもが望んだときにより上に行ける可能性が高くなる。

ラグビースクールのコーチの役割とは、子どもの可能性を広げてあげることだ。
決して目先のゲームに勝たせることではない。
また、ゲームの中には、鍛え上げた身体だからできるプレーがいくつもあった。

ボールを持って突っ込むときのローヘッドや、首も使って相手を止める逆ヘッドである。
逆ヘッドについては、サモア戦での山田選手の怪我を見ても分かるように、基本的に危険なプレーで子どもには絶対にさせてはならないものだ。

南アフリカ戦では鮮やかなサインプレーでトライを取った。
だから、サインプレーが大事だ、などと言う人がいるかもしれないが、あれも、それまでの徹底したディフェンス、確実なハンドリング、走りきるフィットネスがあって、初めて有効だった、ということを忘れてはいけない。

目先の華やかなプレイに惑わされることなく、必要なことを地道に続けることが大切なのだ。
なお「目先のゲームに勝たせることが目的ではない」と言うといろいろな誤解を招くことがあるので、念のために付け足しておく。

勝ってはいけないわけではもちろんないし、負けることがあたりまえでもない。

きちんと一人一人の能力を高めてあげれば、自然に勝つようになるはずである。

もしちっとも勝てないのであれば、練習がちゃんとできていない、スキルをきちんと伸ばせていない、と考えなければならない。
ワールドカップのようなレベルのゲームを見ると、ラグビーというスポーツに本当に必要なスキルを見つけられる。
スキルを見つけたら、身につけさせる練習メニューを考え、それを楽しく実施すればよい。

コメントを残す