研修中は本が読めない

私の研修ではグループワークが多い。

特に新入社員研修のような長期の研修になると、慣れてくれば長い時間のグループワークができるようになるので、2、3時間から半日、また1日以上になるものまで出てくる。

長いグループワークの間、講師の私が主体的にできることはなくなる。
以前、そういう話をしたときに、ある研修会社の人に「別の仕事をしていたらどうですか?」と言われたことがある。
グループワークをしている間の講師は暇だから、別の仕事をしていても、本を読んでいてもよい、という話である。
ところが、実際にはそうはいかない。
以前の自発性の話のところでも書いたが、いつ「自発性の芽」が生まれるのかわらからないし、グループワークの進み方を把握していなければその後のコメントの質を上げることも、適切なタイミングでアドバイスをすることも難しい。
だから、観察していなければならない。

隣にいるサブ講師の人と話をするのはいい。

私の脳的には、話しながらグループワークの様子を観察するのはそれほど難しくはないからだ。
サブ講師と話をしながら、グループワークの中の話し合いにコメントをする様子を見て、サブ講師の人から「すごいですね」と言われたことがあるが、私の中では、なぜかそれはできる。
普段から、複数のグループの進行を同時に観察する訓練をしているからかもしれない。
同様に簡単なゲームをしていても観察をする障害にはならない。

だが、本を読んだり、プログラムを書いたり、次の日の予定を考えたり、という作業は難しい。
なぜならば、それに脳力(誤字ではない)を大きく使わなければならないからだ。
集中する作業をすると観察が明らかにおろそかになる。

試しにやってみたことがあるのだが、その時には、私の「場の把握に関する意識」というのが大きく損なわれた感じがした。
感じだけではなく、実際にそうなのであろう。
なので、グループワークをしている際には私は本を読めないのだ。
だから、私が一生懸命調べものをしていたり、教育に関する本を読んでいたりするときには、研修講師としての仕事を十分にはできていないはずである。

研修中の私は、サブ講師の人とおしゃべりをしたり、ぼーっと場を眺めていたりすることがよくある。
よくある、というよりも、ほとんどそんな感じだろう。

研修を見学してくれた人、受講してくれた人には、そんな私を見て「あー仕事をしているんだな」と思っていただければ幸いである。

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