技術者が足りない

最近、あちこちに営業をさせてもらっているが、行く先々で「技術者が足りない」という話を聞く。

実際に足りないことは間違いないので、新しい人を入れたり、教育したり、という話がたくさんある。
だが、技術者が足りない、という話を聞いて私が強く思うことが一つある。
それは、技術者が足りないのではなくて、業界が、会社が技術者を潰してしまっているのではないか、ということである。
新入社員研修を実施したクライアントと、実施後数年経ってお話をさせていただくことがたまにある。

そこで聞く話の中に「○○さんが体調を崩して会社を辞めた」とか「○○くんが体調を崩して休職中だ」というような話が出てくる。
○○さん、○○くんというのは、新入社員研修の中でも「優秀だ」と思っていた人であることがとても多い。
こういう流れである。

・もともと優秀でモチベーションも高い新人が入ってきた。

・即戦力として現場に投入しよう。

・現場でも仕事を早く覚えるのでできることが増えていく。

・できることが増えていけば、任せられる仕事も増えていく。

・優秀で責任感も高いので、がんばって対応しようとする。

・そして知らないうちに限界を超えている。

・体調を崩す。
これがどれだけもったいないことか。

採用にいくらのコストをかけたのか。
研修にいくらのコストをかけたのか。
配属されてからお金を稼げるようになるまでいくらのコストがかかったのか。

そして、これから会社のために利益を上げられるようになる、というタイミングで、会社を辞めたり休職したりしてしまう。

新入社員を潰してしまうこと、それも優秀な社員から潰してしまうことが、どれだけ会社の損になっているのかを考えてみてもらいたい。

コストを考えると一千万円単位の損失になるに違いない。
将来、会社にもたらしてくれるはずだった利益を考えたら、それは簡単に億単位の金額なるだろう。
そして、体調を崩した社員も、コストをかけて辞められた会社も、そのスキルを失うクライアントも、誰も得をしないという、Lose-Lose-Loseの関係なのだ。

私は、新入社員を潰してしまう部署は、会社に対する背任行為を行っている、と言ってもよいと思っている。

新入社員をつぶしてしまう部署は、毎年何千万もの損失を出している部署なのだ。
新入社員研修で、どんなにコミュニケーションスキルや技術力を身につけさせて現場に出しても、現場で使い潰されてしまうのでは意味がない。
解決策は一つしかない。

各部署で人を育てる力を持つことだ。
サーバントリーダーシップを発揮できる人をリーダーにすることだ。
できる技術者ができるリーダーではない。
技術者のスキルとリーダーのスキルは別物なのだ。
技術者がリーダーになる場合には、リーダーのスキルを身につけなければならない。
技術者がプロジェクトマネージャになるためには、プロジェクトマネージャのスキルを身につけなければならないのと同じことである。
だが、今の多くの会社ではそうなっていない。

だから、無理がきく技術者がリーダーとなり、自分と同じように無理がきくだろうと考えて、技術者を使い潰していく。
技術者が足りない、という前に、せっかくの優秀な技術者候補を減らさない工夫をし、技術者に育てなければならないのではないだろうか。

2件のコメント

  1. 最初に入った会社で潰されかかった身(私ゃ~優秀者ではありませんが!w)なので、よく判ります…ちなみにその時期には10人以上がいっぺんに退職しました。社員50人くらいの会社から。
    無理が効くタイプの(当時の社長に可愛がられてもいた)頭の回転は速い人がリーダーになっていたのも同じです。やはり、「俺が出来るんだから他の人達も…」と考えていそうな人でした。
    どこでもあるんですかねぇ…こういう話。
    一時期、「足りない人材は中途採用で!」というような考え方が流行っていたように思いますが、これも育てることを放棄した、今にして思えば後先考えていない考え方ですよね。

  2. 今でも、人を育てる余裕がないところもけっこう多いんじゃないかと思います。
    景気が悪くなったりして仕事がなくなると、とたんに固定経費になる正社員の技術者を、新人から育てるというのは、それなりに覚悟だったり、その価値だったりが分からないとできない時代なのかもしれません。
    ちゃんと人を育てる文化を根付かせて、技術者が正当に評価されるようにしていきたいですね。

コメントを残す