社外の先生に頼んでよかった???

「社外の先生に頼んでよかった」

これまで社内の技術者により新入社員研修を行っていた会社に、初めての社外講師としてうかがった際に、ほぼ毎回言っていただける言葉である。
私は講師が専門なので、言っていただけないようであれば存在価値がないのだが、本当は「違う」と思っている。

本当は「社内講師による研修が最高」になるはずなのだ。

研修に際して、事前に内容について打ち合わせをさせていただくこともあるが、社内で必要とされる技術スキルが何か、というのを全て汲み取ることはできない。
実際に分かっているのは、社内の人間、それも技術者だけだろう。

研修としては、ヒューマンスキルの習得も含めて、実質的に役に立つ研修とはなっていると思うが、技術の習得については、社内技術者による研修がもっとも効率がよくなる可能性があるのは間違いない。
なので、もっとも良い技術系の新入社員研修は「育てるスキルを持った技術者によるもの」ということになる。

そこで、私が研修会社に「社内講師を育てるような研修をしませんか?」と提案しても、多くの場合相手にしてもらえない。

なぜならば、それが研修会社自身の首を絞めることにつながる、と考えるからだろう。

社内で講師ができてしまえば、その会社の研修を受託することはなくなる。一度つかまえたクライアントからは何度も受注をもらいたい、というのは自然な考え方だろう。
また、講師としても「講師スキルの流出」というとらえ方ができる。講師というのはスキルだけでなりたつ商売である。そのスキルを他人に伝えてしまっては、競争相手を増やすことにしかならない。

これらの点から、「本当の社内講師を育てる研修」というのは存在が困難なことが分かる。

また、技術者に講師スキルは不要だ、と言われるクライアントもおられる。

だが、私はそれでも社内講師を育てる研修を続けたい。

もちろん、講師スキルの出し惜しみはしない。
私の持っている全スキルを紹介し説明し、練習してもらう。
限られた時間の中で、10年を越える講師経験に基づいた講師スキルを身につけてもらうのは、実際には難しいだろうが、それでも、2年を2週間に縮めるぐらいの効果がある場合もある。

私は、会社を、組織を、日本をよくするために(世界と言いたいが日本語しか自信がない)「育てる文化」を定着させることがライフワークだと考えている。
組織が「育てる文化」によって人の意欲と力を引き出すことができれば、組織も働く人も幸せになるだろう。
そのために「教えないで教える」を実践し、人を育てるためのさまざまな要素を取り入れようと日々努力をしている。

さらに、講師スキルというのは、伝えたり、育てたりということを含むヒューマンスキルそのものであり、管理職が必要とするチームビルディングスキルなどとほとんど重なっている。
私の経験からしても、きちんと講師ができるスキルがあれば、プロジェクトマネージャとしてもちゃんと機能するに違いない。

だから、技術者に講師スキルは不要、というのも誤解でしかない。
技術者にこそ、それらのヒューマンスキルを身につけてもらう必要があると考えている。

これが私のしたいこと、なのである。

そして、本当に効果のある研修を続けていれば、おそらく講師としての仕事もなくならない。

通り一遍の説明をするだけであれば、通常のインストラクション講習でも間に合うかもしれないが、私が行いたいのは、本当の育てるスキルを身につけさせる講習である。
これは、どうしても時間も手間もかかるし、技術系の新人研修などよりは講師としてのヒューマンスキルが必要とされる。
社内でそこまでできるようになれば、素晴らしいことであるし、そうなってもらいたいのであるが、実際にはなかなか難しいだろう。
それはラグビーのコーチを育てることを通しても、十分感じられることである。

なので、講師スキルと管理職スキルは重なる部分が多く、両者をあわせて学ぶことが非常に効果的であるが、そのような研修は、私のような「社外講師」に任されることがこれからも多いだろう。

私はそこで「本物を教える」講師として仕事をしていきたい。

きちんとした教育の価値を納得してもらえさえすれば、必ずや常に需要はある。

研修を行った際によく聞くのが「どうせつまらないんだろうと思って来たら、楽しくて時間があっという間に過ぎてしまった。」という感想である。

学ぶことは本質的に楽しい。

そうであれば、楽しくないときには学べていないのだろう。
楽しくない、学べない研修に意味はない。

研修は実施することではなく、学び、変わることに意義がある、ということを、これからも実践を通して伝えていきたい。

組織内の人的リソースで大切なのは「数」よりは「質」である。

「質」の向上のために、ぜひ社内講師を検討していただきたい、と切に思う。

最後に私が実施している新入社員研修の雰囲気を感じていただける「新人研修物語」をダウンロードできるようにしておくので、ただ教えるだけではない研修はどのようなものなのか、興味がある方はご覧いただきたい。

ダウンロードはこちらから「新人研修物語

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