人間は忘れる生き物

20分後には42%、1時間後には56%、1日後には66%、一ヶ月後には79%を忘れる、という調査がある。つまり「講義」ではスキルの習得はもちろん知識の伝達もできない。

研修の中での「グループワーク」については、一年後に尋ねても「やりましたねぇ、懐かしいなぁ」という声が返ってくる。体験型の学習はそれだけ「残り」「身につく」ものなのだ。
だが、3分や10分のワークショップでは気づけること、学べることには限りがある。

よく見るのが、短時間のワークショップをやらせて、発表させて、期待した答えが講師の期待と違うと、「そうですね」と言った後に違う内容を答えとして伝えるパターンである。
ワークショップをやることに意味があるのではなく、その中で気づくことに意味があるのだが、手段と目的が違ってしまっている。

講義がメイン、考える時間が十分に取られない、考えた内容が尊重されない、こういう研修では、モチベーションの維持が難しいだろうし、意図的に失敗させてそこから学ばせるような進め方もできないだろう。

物事を学ばせるためにはきちんとした学習のためのデザインが必要である。
組織全体として何を目指すのか、目指すものを実現するためには、管理職にはどのようなスキルを持たせ、新入社員には何を伝えるのか。
もちろん、それぞれにどのような手法を使うのか、というのも大切な要素である。

自分自身の経験を元に、研修なんてやっても無駄、と思っている人もいるかもしれないが、きちんとやれば必ず効果はある。今はそれだけのさまざまな教育論的な蓄積がある時代。使わないのはもったいない。

例えば、管理職研修ではアクションラーニングの手法を取り入れ、現場の問題点を認識、分析、解決していくことが実利的な学習となり、自律的な学習につながる。
加えて、スキルコーチングの手法によるコミュニケーションスキルの訓練を組み合わせれば、相乗効果により、効率的な学習が期待できる。

私は、一つのスキル、一つの学習方法を伝えるだけではなく、問題を複数の課題に分析、分割し、それぞれについて最適な学習方法を提案したいと思っている。

お客様が教育で目指すところは最大限尊重する。それが目的だから。
だが、それをどう実現するかについては、さまざまな教育理論、実践方法の中から最適と思われるものを選び、提案していきたい。

さまざまな教育理論があり、実践で試され、効果のある学習方法がいろいろ提唱されているのに、それが現場では実施されていない事が多い。
もし研修が眠かったら、それはどこか間違っていると思って良い。
眠る受講生が悪いのではなく、眠らせる講師の問題なのだ。

組織全体で「育てる意識を持つことが大切」とよく言われる。
だが、新入社員研修でコミュニケーション、チームでの活動スキルなどを学ばせても、配属される現場にそれがないことがある。
そのために、せっかく学ばせてもつぶされてしまうことが多い。
これはもったいない。

教育費は経費であってはならない。
教育費をリターンの大きい投資とするための教育を続けて行きたい。

忘れる人間に忘れさせない。
学びたい人間を作り、スキルを身につけてもらう。

これが目指す教育である。

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