社内講師をするときに

私は講師業をしているので、このような話をすると自分の首を絞めてしまうかもしれないのだが、今回は、社内講師向けの講師講習を行う際のポイントを書いてみたい。

研修にうかがうと「さすが外部講師ですね」と言われることがある。
社内の方が講師を行うのに比べて効果があったということだろう。

だが、社内の講師の方が講師スキルを学ばれたら、我々外部講師は全く歯が立たないだろう。

コストの面もあるが、何より社内の業務に精通していることが大きい。

技術講習においても、できるだけクライアントの意向は反映させようとは思うが、そのクライアントの実際の現場の仕事を知っているわけではないので、どうしてもミスマッチの部分が出てくることは避けられない。
オーダーメイドを基本として考えてもそうなのだから、あらかじめカリキュラムを決めている場合にはなおさらである。

もし、社内の業務、事情に精通している方が講師スキルを学ばれたら、的確に業務に役立つスキルを伝えられるだろうし、もっとも効果の高い研修になるだろうことは想像に難くない。

だから、クライアントの最大利益を考えると、やはり社内の方に講師スキルをお伝えするのがベストだ、という結論になるのだ。

社内で講師をされる方には以下の2つの点を意識していただくだけで、成果が大きく違ってくる。

・伝え方

・理解のしくみ

伝え方は以下の点に気をつけてもらいたい。

多すぎる言葉は伝わらない。
30分話を聞いてどれだけ覚えていられるか。
話し続けても自己満足になるだけ。ポイントをまとめて簡潔に。

早口の3分と、ゆっくり言葉を選んで話す3分ではどちらが伝わるか。
人間の脳は言葉を理解するのに時間がかかることを忘れない。
記憶に残したければ、残せる速度で話さなければならない。
また、理解のための間も大切。

専門用語などを初めて使うときにはきちんと説明をすること。
知らない言葉が出てくるとそこで思考が停止する。
専門用語以外に、一般的でない言葉も同様。

理解のしくみについては以下のような点が大切である。

理解するのに必ず時間がかかる。
どれだけ言葉を尽して説明してもその場で理解できることは少ない。
理解させたければ必要な時間をかける必要があり、その長さは人によって異なる。

理解するには気づきが必要
どれだけ言葉を尽くして説明しても、理解にはなかなかつながらない。
考えることや体験することを通しての気づきがなければ理解は生まれない。

理解しできるようになるためには訓練が必要
説明だけでできるようになるわけはなく、スキル化するには訓練が欠かせない。
研修でスキルを身につけさせたければ、必要な訓練時間を確保すること。

これらに加えて、モチベーションを高めること、適切な難しさの課題を設定することなど、ができれば、効果的な研修となることだろう。

さらに、研修時間のうち、講師の話している時間が1/4を越えたらそれ以上の話はあまり意味がない、ぐらいのつもりでいるとよいだろう。
ちなみに、私の基準は全体の1/6以下である。
講師の話す時間を短くすることで、残りの時間を「参加の時間」にできる。
受け身となる座学よりも、参加型の学習時間の方がはるかに有意義である。

これらは私が講師向け講師研修を実施するさいに、実際に実施ている内容である。
もっとも実施にあたっては、効果的な課題とグループワークにより、最大限の気づきと訓練ができるようにしている。

私は、社内にノウハウがあることに関しては、社内講師の方が効果的な研修を実施することができると考えており、コスト的にもそれがベストな方法であると考えている。
だから私は社内で講師をされる方に講師スキルをお伝えしていきたい。

もっとも低コストで、もっとも高い効果を得られる社内講師を育成することはこれからの社会できっと注目されていくことだろう。

さらに、講師スキルを学ぶことにはおまけもついてくる。
講師スキルはコミュニケーションスキルそのものであるから、きちんと学ぶことは、必ず講師以外の業務の質を上げることになるし、人間力の向上にもつながっていき、特に管理職の方には有効なスキルとなることだろう。

講師スキルを社内講師の方が学ぶことは、私のような研修講師が仕事先をなくすだけで、それ以外の誰も損をしない。
全ての組織に育てる文化が根付けば、私のような仕事はなくなるのかもしれないが、私はそのような社会になって欲しいと願っている。

なぜならば、育てる文化を広めることで世界をよい方向に変えていくことが私のライフワークだからだ。

すでに3月末までは講師を育てる仕事で埋まっている。
今年度の新入社員研修に向けて講師育成研修を私が実施できるのは、4月の第一週と3月末までの週末だけである。

興味のある方はぜひご相談いただきたい。

会社としての参加ではなくとも、個人で希望される方が多ければ集合研修を企画させていただきたいと思っている。
料金は人数によるが、それほど高くない料金でご案内させていただけるはずである。

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