コミュニケーションシートは命綱

私の研修ではコミュニケーションシートというものを使っている。

アイデアは、今年も新入社員研修でお世話になる研修会社からいただいたものであるが、運用に関してはかなり独自のノウハウを含めて行っているので、同じ研修会社の研修に参加していても、他の講師の方とはだいぶ使い方が違っているようである。

コミュニケーションシートというのは、一般的に「日報」と呼ばれているものとほぼ同じ扱いをされていることが多く、実施した内容の報告と、質問が書かれていることが多いようであるが、それではもったいない。

私の会場のコミュニケーションシートには、実施した内容が書かれることは少なく、全ての内容を記録してあるものはほとんどない。
実際には、何をしたか、については講師の私がよく知っているので、私が読むものにその情報は不要である。

また、質問もほとんど書かれない。
それは、自分で考えて自分で答を見つける、というのを徹底することと、自分で見つけることの楽しさに早くから気付いてもらえるようにするからである。

それでは何が書かれるのだろうか。

書かれる内容は、その日の研修で悩んだこと、気付いたこと、次にどうしたいか、などという非常に個人的な内容である。

私はその内容について翌日の朝にコメントをし、不安を取り除き、悩みを解決するためのヒントや方向性を提示し、良いことがあればほめることになる。
もちろん、なにか訂正したいことがあれば、直接的ではないにしろ、何らかのアドバイスをすることもある。

新入社員研修などでは、研修会社、所属会社にも回るので、公的な文書の性格を持つものであるのだが、所属会社の担当者には、細かい内容については目をつむってください、とお願いし、講師の私との、文字通りコミュニケーションを取るために利用している。
より密度の高いコミュニケーションを行うためには、そこに本音が出てきてくれなければ困るので、所属会社の担当者のあまり細かいチェックがあっては困るのだ。

グループワーク主体で研修を運営し、自発的な学習により進めていくと、どんどんグループワークの時間が長くなっていく。
特にある程度長期の研修であれば、グループワークの効率も上がっていくので、それを有効に活用するために、グループワークにかける時間がさらに長くなっていく。
そして、1週間もすれば、ほぼグループワークだけで運用できるようになる。

そうなると、コミュニケーションシートの対応が講座運営の主体となる。

コミュニケーションシートの内容を初日から重視し、そこに生の声が書かれるように誘導していくのは、コミュニケーションが講座運営の主役になることが予測されるからである。
そして、コミュニケーションシートがなければ、講座の維持自体がおぼつかない、という状態にまでなっていく。

なので、現実問題として、忙しくなったときであっても、例えばコミュニケーションシートの対応をサブ講師など、私以外の人にゆだねるのはとても怖い。
対応をゆだねてしまうことは、私にとっては、私が講座の運営を放棄することとほぼ同じ意味なのだ。

たかがコミュニケーションシート、されどコミュニケーションシート、なのである。

これが、私自身がコミュニケーションシートの対応を行うことにこだわり、対応については毎日1時間から2時間考える理由である。

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