講師を育てる

2014年1月から、講師を育てる仕事をいただいた。

対象は講師経験がない技術者の方で、期間はおよそ三ヶ月である。

このような経験は初めてではないので、どのように進めたらよいのか、ということについての心配はあまりない。

だが、どこまでやるか、という点については、よく悩む。

研修会社からの依頼で講師を育成する、ということになっているのだが、その研修会社の講師の標準スタイルというのがある。
それはよくある、プレゼンテーション資料を見せながら説明を行い、演習問題をして、回答を配ってを繰り返し、最後にプロジェクト演習をグループワークで行う、という形である。

実際のところ、この形式ならばカリキュラムを守りやすいし、熟練していない講師でも講師をすることができる。

実は私もこの研修会社から仕事をいただいているのだが、私のブログを読んでくださっている方ならご存じのように、私の研修の形は、この標準スタイルには全く沿っていない。
それでも、研修の成果は出ているし、クライアント様からはリピートをいただいているということで、実績をベースにして私のやり方を認めていただいている。

だが、そのような標準スタイルに則っていない私が、標準スタイルを最初のよりどころとすべき新人の講師の方にどのように教えていくのか、というのは非常に悩ましい問題である。

私の研修の方法はスキルコーチングの考え方に則っており、教える内容に対する知識以外にスキルコーチングの素養がなければ実施が難しいことは理解している。
だが、標準スタイルよりも私のやり方の方が効率が良いことも、おこがましいようであるが、実感している。

研修の成果として、よりよいものを目指すのは私の基本的な方針である。

仕事として考えた場合には、標準スタイルをそつなくこなす講師を育てるべきであろう、というのは分かる。
常識的な判断だろう。

しかし、それは最低ラインであり、できれば講師としての仕事の楽しさを味わってもらうためにも、受講生の成長のためにも、よりよい講師としてのスキルを伝えたい、とも思ってしまうし、研修会社からも(私のようなとは言わないが)「リピートをもらえる講師を育てたい」とうかがっている。

やり方としては、最低ラインのスキルを身につけてもらえたら、その後により発展的なコーチングのスキルを身につけてもらう事になるのだろうが、実のところ、スキルコーチングのスキルを三ヶ月の集合研修で身につけるのはそれほど簡単なことではない。

私が講師研修でコーチングに基づいた進め方を伝えると、その効果の高さから、ややもすると、私の「真似」をしようとする人が出てくる。

だが、それでは絶対にうまくいかないし、実例もある。

講師として出る現場は、全て環境が違う。
場所が違い、人が違い、前提条件も違う。

その中で私と同じことをしても、結果を出すのは無理である。

必要なのは、その都度、どのようなことをするかというアイデアと判断であり、それを的確に行うためには、やはり本質を理解した上でそれなりの訓練が必要になる。

また、コーチングにおいて自制は重要な要素であるが、人によっては、自制を学ばなければならない、というのも大変なことであろう。

すべての人が三ヶ月でこれらを身につけられるか、といえば、正直なところ、なかなか難しい。

育てるという考え方の本質を伝えながら、それぞれの人の中で、暗闇の中でチーズが熟成するような変化が起きることを待つのが、三ヶ月間にやるべきことなのだろうと思う。
そして、想像力とコミュニケーション能力を高めつつ、少しでもよい研修を実現できるように、講師研修を進めていくことになるのだろう。

気を抜かず、急ぎすぎず、着実に、地に足の付いた研修をいつも以上に心がけていきたい。

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