信じている

前のブログにも書いたのだが、今年の新人研修には社会人基礎力というヒューマンスキルの要素が取り入れられた。

カリキュラムの中では、当然のように講師がコメントをする必要があるのだが、そのコメントがマニュアル化されている。

私は過去の経験から、講師のコメントは、講師の考えていることを講師の言葉で語らなければならないと思っている。
そうでなければ、受講生は言葉を聞いてくれないし、受け入れてもくれない。
ましてや、納得などしてくれないだろう。

そのような観点から、そのようなヒューマンスキル研修の経験のない講師仲間に、自分の言葉で語るほうがいいよ、という話をしていたら、カリキュラムを作成した講師の方から注意を受けてしまった。

私のようなヒューマンスキル系の経験のある講師ならば自由にやればよいが、他の講師は技術系の講師であるから、マニュアル通りやるように、とのことであった。

これを聞いて、2つの問題があると感じた。

一つは、技術系の講師であるからヒューマンスキル系の講師はできないだろう、と判断していること。
これは、大変失礼なことではないかと思う。
ヒューマンスキル研修の講師の経験はないかもしれないが、社会人としての経験はある。
その経験を元に自分の考えを伝えられるようにすれば、新人に対してのヒューマンスキル系の研修の実施も可能だろう。

もう一つは、ヒューマンスキル系の内容において、講師が信頼されない場合の問題である。
マニュアルに書いてある回答で、受講生が納得できない場合に、講師がどう思われるか、というのが大きな問題なのである。
1日や2日の研修であれば、そんなものか、ですむかもしれないが、いつも納得できる回答をできない講師を受講生がどう思うだろうか。
技術はできても、社会人の基礎力はない、と判断された講師の言うことを、受講生が聞くだろうか?
また、信頼してくれるだろうか?

新人研修では30日から50日にわたって新入社員と向き合い続けなければならないのだ。
その中で、社会人の先輩として信頼されないということは、研修そのものの成否に影響しかねない問題である。

そのような問題を回避するには、たとえ未熟であっても、受講生と真摯に向かい合い続けるしかない、と私は考える。

そもそも、技術職だからヒューマンスキルはできるわけない、などと考えるぐらいなら、ヒューマンスキル系の研修などするべきではないのだ。

だが、私は講師として働こうとしている方の講師としての姿勢を信じる。
実際に見ていても、みなさんは非常な努力をされている。
その結果を信じずに、研修の講師などしていられない。

現在、講師仲間の方に対して、私の経験を元にして、少しでも自分の言葉で語れるようになるグループワークをゲリラ的にさせていただいている。
自分と他人の経験から、自らの中のイメージを膨らませて明確にしていくことが目的である。
頼まれた仕事でもないので、私のお節介で純粋なボランティアであるが、全く手は抜いていない。

終わった後には、イメージが明確になった、自身の中にあるものから社会人基礎力を理解していく糸口を見つけることができた、社会人基礎力のより深い内容について理解することができた、自然に身に入ってきたので、時間があっという間に過ぎた、などの感想をいただく事ができた。

すぐにはヒューマンスキル系の研修を上手にはできないかもしれない。
できないことにより、研修中に崖っぷちに立つことがあるかもしれない。

私は初めての研修で遭遇した崖っぷちから、ワークショップやコーチングという「知識」に救われた経験がある。
知識は、崖っぷちでつかむべき藁になり得ることを知っている。

今回の私のお節介がその知識となり、どなたかの崖っぷちからの生還に役に立てれば、これ以上の幸せはない。

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