研修の仕事には、2つの面がある。
一つは何度も同じ事を繰り返す必要がある、ということと、もう一つは常に変化しなければならないということである。
新人研修などでは、技術研修であっても毎年同じような内容の研修を繰り返すことになる。
技術的な面でもそうであるし、毎年ヒューマンスキルの向上を目指すことも同じである。
同じクライアント、同じ日程で実施するとなれば、なんとなく「昨年も同じ事をしたなぁ」と思う感じになったりもする。
1日や2日の短期の研修であれば、同じクライアント、同じ内容であれば、実施する度に同じカリキュラムで実施することになるので、何度も同じような話をし、何度も同じグループワークを実施することになる。
研修の仕事というのは、本質的に同じ事を繰り返さなければならないことが多いのである。
私のように、基本的にオーダーメイドで研修を実施することを前提としていても、そうなのであるから、固定カリキュラムで実施している場合にはなおさらであろう。
だが、そのような同じ事を繰り返しているように見える研修でも、その中での変化を目指す必要がある。
技術的な研修であれば、最新の技術的な内容に追従しなければならないし、講師自身の技術的なスキルの向上も目指したい。
伝えるべきものが変わり、講師のスキルも向上すれば、それに合わせて実施内容も変わっていくだろう。
もしも講師のスキルや技術的な内容が変わらなくても、受講生は毎回違う。
受講生に寄り添った研修を行えば、それによっても研修の内容が変わっていくはずである。
コミュニケーション研修や、ヒューマンスキル研修などでも技術研修と同様である。
ヒューマンスキルについても理論的なものは常に進化しているし、それを学ばせるためのさまざまな手法も開発し続けられている。
講師としても、それらの新しい学習手法に習熟することができれば、よりよい学びのためにそれを使うべきだろう。
つまり、研修というのは本質的に同じ事を繰り返す仕事なのだが、よりよいものを提供し続けようとすれば、変化し続ける必要がある仕事でもあるのだ。
評価を受けた同じものを繰り返すことは、楽である。
クライアントからすれば、実績があるという意味で安心であるのかもしれない。
営業的にもそのほうがよいのかもしれないし、私も、求められれば、過去に実施したことのある内容をそのまま実施することもあるだろう。
だが、伝える側が変化し続けることは、伝える側の誠意なのだろうと思う。
それが、よりよいものを提供し続けることにつながるのだから。
こういう言葉もある。
「学ぶことをやめたら、教えることもやめなければならない。」
ロジェ・ルメールというサッカーの元フランス代表監督の言葉である。
育成にかかわるものとして、肝に銘じるべき言葉であろう。