カタバミ戦記 その弐

カタバミとの戦いも新しいフェーズを迎えたようである。

掃討戦である。

芝が駆逐されてしまっているような主戦場での戦いはほぼ終わった。
私の勝利である。
「完全駆除は難しい」カタバミとはいえ、所詮は草である。スキルを身につけ、本気になった私の敵ではない。

まだ散発的な抵抗はあるが、それは見つけ次第たたけばよい。
多くの場合、大地のエネルギーを吸い上げる根を残したことが抵抗を許した原因であり、見晴らしのよい主戦場での抵抗は、高確率で長い根の発見につながるので逆に好都合である。

だが、掃討戦はむずかしい。

敵は、茂っている芝の中に姿を潜めているのだ。
ゲリラである。
俯瞰的に見てもなかなか見つかるものではない。

どうするか。

地道に探すしかない。
地べたに這いつくばるようにして、芝の根をかき分け、カタバミの葉、カタバミのほふく茎を探し出すのだ。

近づいてよく見ると、今まで気にならなかったような、緑のカタバミの葉や、他の雑草もよく見えるようになる。
それらを適宜抜きつつ、縦横無尽に這った芝をかき分け、芝に隠れるゲリラとなったカタバミを探すのだ。
芋虫と遭遇する恐怖におびえつつ、カタバミの姿を求め、芝をかき分ける。

「草の根分けても探し出す」という言い方がある。
この言葉は、きっと芝の中でカタバミと戦ったことがある人が考えたに違いない。
見つけてからもやっかいである。

敵の最大の武器であるほふく茎をたぐろうとしても、味方であるはずの芝に阻まれてしまうのだ。

まわりの芝ごと抜き去ってもよいのならば話は簡単なのだが、それでは本来の目的を見失ってしまっていると言わざるを得ない。
直接の目的はカタバミの殲滅なのだが、そもそも芝が浸食されてしまうから戦っているのだ。
私が芝を浸食してしまっては元も子もない。

だから、芝とカタバミを瞬時に見分けるスキルをフルに活用して芝の中からカタバミを見つけ、指先でさわれば見分けられるスキルもフルに使って、芝を避けつつカタバミのほふく茎をたぐるのだ。
そして、幸運にも長い根を発見できれば、芝のほふく茎の隙間に慎重に指を差し込みながら、カタバミの根を抜き去る。

芝とカタバミが錯綜するところでは、ほふく系を見失い根までたどり着けないことも多い。
間違って、芝を抜いてしまうことも増えてくる。
芝にすれば、流れ弾にあたったようなものだろう。

だが、芝もきっと分かってくれるに違いない。

私が苦労をして芝のために戦っていることを。
将来の芝の繁栄のために、戦い続けていることを。

歴史的に見ても、勝ちきることは不可能なのが掃討戦である。
ある程度戦ったら、あとは警備活動に委ねるしかないのだろう。

その日まで、あと少しがんばろう。

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