ワークを作る

私の研修では、可能な場合にはグループワークを行い、グループで課題に取り組むことを通してさまざまな学習を進めてもらっている。

ここではその課題を「ワーク」と表現する。
他にもアクティビティやプログラムなどと表現することもあるが、全部同じである。

研修でワークを考える際には次のような考え方をすることが多い。

1)学ばせる内容を考える。

2)学ばせる内容を分析し、ワークの対象とする要素を考える。

3)要素をどうやったら身につけられるかを考える。

4)インストラクションの仕方を考える。

5)シミュレーションをする。

こんな流れである。

1)の学ばせる内容を考える、は研修であれば当然出てくる。
全体の中で「今」学んでもらいたいものを選ぶことになる。研修全体で学んでもらいたいことから分析し、そのワークで学んでもらうことを選ぶのだ。

何を学んでもらうかを考えなければ、ワークは作れない。
ここで、ワークをする目的を明確にしておくことで、その後の作業がぶれなくなる。

2)では、1)で選んだ内容をさらに分析し、個別の要素にしていく。
「走る」を「腕の振り」「足のひきつけ」などに分解していくようなイメージである。
個別の要素が明確であれば、ワークの目的が明確になる。
また、ワークの結果に対しての対応も的確にすることができる。

3)では、ワークの形を考える。
個別の要素を身につけさせるための方法をみつけなければならない。
作業そのものの中で身につけさせることもあるし、作業後の振り返りまでをワークと考えてそこで身につけてもらうことを想定することもある。
何か一つではなく、いくつかの作業の組み合わせで気づきをうながすこともある。

また、自分では考えつかない場合には、既存のさまざまなワークを調べて使えるものを選ぶこともある。

私の場合、オリジナルのワークを作ることが多い。
他者との差別化を図る目的もあるが、学んでもらいたい要素を明確にすると、既存のワークでは足りなかったり、余分だったりして不適切であることが多いからでもある。
そういう場合には、既存のワークのエッセンスを取り込み、オリジナルのワークを考えることもある。

4)ワークを考えついたら、それをどのように実施するのかを考えなければならない。
実施方法を考えても、説明が不適切であったり、心理的な準備ができていなければ、せっかく作ったワークが有効に機能しない。

その時の心理的な状態を考慮した上で、どのような説明をすればよいかを考え、補助資料が必要ならば作成し、ワークを実施するまでの流れを考える。

この段階を省いては、せっかく作ったワークの価値が発揮できない。

5)シミュレーションすることも大切である。
頭の中で考えた言葉を、自分の口で話し、自分の耳で聞くと違和感を感じることもある。

私の場合、風呂などでぶつぶつ言いながら練習することも多い。

できれば、大勢の前で予行演習的な事をできればよいのだが、仕事でそのような機会があることはほとんどない。

なので、口は講師、耳は受講生、という意識を持ち、シミュレーションをしてみるのだ。
毎回、このような流れでワークを作っている。

私の研修は徹底的なカスタマイズが基本である。
受講生に必要ないことをしてはいけない。

なので、過去に使ったワークを行う場合でも、その時の受講生に合わせてカスタマイズを行うことになる。
一般には同じカリキュラムを同じように繰り返している研修も多く、それをコンテンツと言っていたりする。
そのコンテンツの数が、例えば研修会社の対応できる内容だったりもする。

残念ながら私は固定化されたコンテンツを持っていない。
理由はカスタマイズが基本だからだ。

同じ「コミュニケーションを学びたい」という言葉で依頼をいただいても、そのクライアントに本当に必要なものはそれぞれちがったりする。
当然受講者の経歴も性格も違うことがほとんどである。

いただいた時間をいっぱいに使って効果的な研修をしようとすると、必然的に固定化されたコンテンツは持てない。

だから「コミュニケーションの研修をできます」とは言えるが、「あらかじめ作ってある、このコンテンツを実施します」とは言えないのだ。
書いていて、なんだか勝手に茨の道を選んでいるような気がしてきたが、自分の信じる正しいことをしようと考えたときに、これが論理的な帰結なのだから仕方がない。
これからも、楽しみながら、苦しみながら、効果的なワークを考え続けていくのだろう。

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