スポーツマンシップの研修で教えられたこと

私はラグビースクールのコーチをしている。
未就学児から中学生までが所属しているラグビースクールである。

その関係で、スポーツ、というよりも、子供の育成に関する研修などに呼んでいただくことがある。

昨日も埼玉県のラグビーアカデミーという強化の一環で「スポーツマンシップ」をテーマに研修を実施して欲しいという依頼をいただいた。
実技の前の1時間弱の短い研修で、対象は小学4年生から6年生までである。

基本的にボランティアなのだが、手を抜くこともなく、3日ほどいろいろと何をどう伝えようか考えた。

伝えたいこととして、以下のようなことをあげた。

・スポーツとはなにか。
・一緒に楽しむ仲間という意識。
・ずるいプレイの定義。
・相手を尊重する意識。

実際に1時間弱でこれを全部、というのは欲張りであるし、全部伝わるとも思っていない。
ラグビーの練習も研修も同じで、多すぎるテーマはよくない。

だが、このような話の進め方をしていけば、スポーツマンシップ1つのイメージが出来るだろうと考え、とにかく要素を用意し、あとは進み方で調節をしようと考えた。

たまたま高校生もいたので、選手宣誓をやってもらうところから研修を始めていったのだが、すべてワークショップである。

最初はなかなか話も進まなかったのだが、繰り返して行くうちに話し合いの形ができてきて、発表を進んでやってくれるようにもなってきた。

運動とスポーツの違い、などというワークショップなどを重ねていったのだが、子供達はすごい。

多少の誘導はしたにせよ、彼らの口から、私が伝えたいと思っていた言葉がほぼ全て出てきてしまい、私は、ワークショップのテーマを与えて考えてもらい、結果の発表を「字が汚い」と言われながらホワイトボードに書き出し、すごいねぇみんな、って言っているだけで研修が終わってしまった。

そして、その中で先に挙げた伝えたいことのほとんどが、あげられてしまったのだ。

もちろん、私があらかじめ想定していた想定して内容を越えていたものもいくつかある。

「競い合う」はスポーツの要素で、戦う相手は仲間である、というのを考えていたのだが、彼らの口からは「ライバル」という言葉も出てきた。
まさに、その通りだが、私は3日かけてその言葉にたどり着けていなかった。
でも、50分の中の3、4分の話し合いの中で、彼らの口からそれが出てきた。
私の意識の中になかったのだから、誘導の結果ではない。
彼ら自身の意識であり、言葉である。

すごい、と心から思った。
3日かけて予習して、子供に私が教えてもらいに来たような感じだった。

用意してきた課題は半分ぐらい使わなかった。
もともと話の進み方でどの課題を使うかを考えようと思っていくつも用意してきたので、全部を実施できないのは問題ないのだが、どの課題を選ぶか、というのも、子供の言葉に従っているだけですんでしまった。

研修が終わった後、同じ部屋で見学されていた保護者の方が「なるほど、と思いながら聞いていました。」と言われた。
その時は言わなかったが、教えてくれたのは子供なのだ。
私が教えたわけではない。

今日の研修では、きっと多くの大人が、子供に教えられたに違いない。

いつも思うが、教えてあげるなんておこがましい。
私にできることは、彼らが考える環境を提供することだけだ。
そして、それでいいのだ。

というのを、あらためて考えた研修だった。

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