長いものに巻かれることの是非

Altavista という検索エンジンを覚えている人はどれぐらいいるのだろうか。

私が使った中で、もっとも古い全文検索エンジンで1995年にはすでに存在した。
Yahooなども立ち上がっていたかと思うが、あるとき、Google検索エンジンが登場し、その検索の精度、トップページのシンプルさなどから、Google検索エンジンを主として使うようになった。

しばらくは他の検索エンジンも頑張っていたのだが、今では検索エンジンと言えばGoogleということになっており、実際にGoogleがなければインターネットをまともに使えないような状態になっている。

Gmailもとても使われているサービスで、私も利用している。
利用できるストレージの容量も大きくとても便利である。
さすがにメールサーバーは自前で確保しているが、Gmailに業務が依存しているところも多いだろう。

クラウドと総称される、サーバー仮想化、アプリケーション提供、ストレージ提供の仕組みなども、最近ではよく使っている。

他にもいろんなサービスが各企業から提供され、使用されている。
それらのサービスに便乗したサービスもたくさんある。

もちろん、それらがいけない、というわけではないし、私もいくつか利用している。

このようなサービスを利用することには、高度な技術、規模が大きいことによるコスト低減など、メリットは多い。
データのバックアップを自分で行わなくてもいいだけでも、どれだけ気楽なことか。
これからも、そのような「提供されているサービス」を利用して、さらに新しいサービスを提供していく形は増えていくだろう。

だが、不安もある。

最近、GoogleのRSSサービスが停止する、というニュースが流れていた。

過去にも、いくつものサービスが停止され、そのたび毎にニュースになり、利用している人があわてて代替サービスを探す、というようなことが繰り返されている。

もし、業務が依存しているサービスが停止され、同様のサービスを提供している業者がいなかった場合、どうなるのだろうか。

もちろん、影響の大きいサービスを急に止める、などということはほとんど考えられないが、可能性がなくもないのが不安の種となる。

他にも、本当にうたっている通りのサービスが提供されるのだろうか(異常発生時のスワップがうまく動かなかった、などはたまに聞く)、などの不安もある。バックアップメディアが手元になく、ネットワークにトラブルがある状況では、手も足も出せなくなってしまう。
契約でどう書いてあったとしても、なくなったデータが取り戻せなければ、致命的な状態になってしまう。

実際に私がクラウドのアプリケーションや仮想サーバーのサービスを使っているわけではないので、杞憂なのかもしれないし、さまざまなソースを辿ってみても、多くの工夫がなされ、経験の蓄積もあり、だいぶこなれているようには思える。

でも、どうしても、業務の基幹部分を、一つの営利企業の提供するサービスに完全に依存することは恐い、と思ってしまう。

IT業界ではスタンダードがとても大きな力を持つ。
デファクトであろうが何であろうが、スタンダードとなったものに対して、人も金も集中し、より良いものになっていくのだから、それにみんなが乗る。
当たり前の話である。

つまり、IT業界では「長いものに巻かれること」は正義であり、私もこれまでずっと「メジャーになるもの」もしくは「メジャーなもの」に対してずっとアプローチしてきた。
Linuxなどは5インチフロッピーで配布されていた頃から触れているのも、メジャーになると考えていたからであり、開発案件についても「メジャーどころ」にいち早く目を付けることをずっと心がけていた。

私自身は、率先して長いものに巻かれてきたのだ。

だが、最近のネット上のさまざまなサービスについては、一私企業の提供するものであり、デファクトスタンダードとも呼べないものになっているような気がする。

これが、まったく同じサービスを複数企業で提供するだとか、行政がサービスを提供している、というようなものであればインフラとしても考えられるのだが、残念ながら今はそうはなっていない。

クラウドの発想は本質的に間違っていないと思う。
長い目で見れば、計算機資源のインフラ化というのは正しいと思う。

でも、そのサービスが突然なくなってしまうことや、セキュリティの問題がゼロではないことも不安である。

クラウドサービスがもう少しこなれ、どこの企業からサービスを受けても同じ内容となり、クラウドサービス提供企業間でのバックアップやスワップが可能になれば、、本来の意味のクラウドになるのだろう。
もちろん、インフラサービスを提供するのであるから、サービス提供に対する何らかの法的な規制もあるべきだろう。

そこまで達するのにどれだけの時間がかかるかわからないが、そこまでいって初めて、喜んで巻かれたくなる「長いもの」になるのではないだろうか。

心配しすぎなのかもしれないが・・・。

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