今、研修の設計をしている。
内容は、クライアントからご依頼いただいたコミュニケーション研修である。
研修の「設計」というと違和感を覚える方がおられるかもしれないが、分かりやすく言えば「カリキュラムを考える」ことである。
これまでの経験から「この条件で、こんなことに気付いてもらうには、こんなアクティビティとインストラクションが適しているだろう」というようなことを、クライアントの状態や人数に応じて選んで組み合わせていく作業である。
アクティビティというのは、作業だったりグループワークだったりの参加型の作業のことを総称してそう表現している。
また、気づきを生みやすくするために、意識を高めたり、言葉に対して慣れを作ったりするような工夫を、アクティビティの流れとして組み込んでいく。
参加者の意識、年齢層や立場によってもスタート地点が異なるので、それにも対応して、できるだけ無駄のない内容とすることも心がける。
知ってることをやらされる研修ほどつまらないものはない。
手持ちのアクティビティでは効果が足りないと判断したら、既存の別のアクティビティを探したり、新しく考え出したりして、最適だと思われるアクティビティとなるまで、アイデア出しとシミュレーションを重ねることになる。
ここまでやっても、実際に現場では「足りないこと」や「多すぎること」が発生するので、そのためのオプションも考えておかなければならない。
内容的に「前提とした条件がゆるい」場合には、アクティビティの時間を短くしたり、場合によっては飛ばしてしまったりすることもあるので、その場合に使えるアクティビティを余分に考えておかなければならない。
逆に「前提条件が参加者にはきつい」場合には、より分かりやすいアクティビティを追加して、用意したものをなくしてしまうこともある。
経験を重ねる毎に、手持ちのアクティビティは増えていくので、設計の幅は広がるし楽にもなるが、既存のものの使い回しだけではアクティビティを考えるスキルが低下してしまうだろうから、常にヒントを探して、アイデアを出しておくことは怠ってはならないと考えている。
これが、私の行っている「設計」作業である。
ホームページに「これが当社の研修のカリキュラムです。」と出せない理由がここにある。
条件によって、毎回違うカリキュラムになるし、設計時によりよいアクティビティを作り出せれば、それを実施するのである。
そして、現場では参加者の反応を見ながら、カリキュラムを動的に組み替えながら、最初から予定されていたカリキュラムのように自然に実施していく。
なので、すでに実施したカリキュラムを参考としてご覧いただくことはできるが、それは固定的なものではなく、過去のカリキュラムなのである。
研修を行えば、講師にも必ず気づきがある。
発見のなかった研修など、これまで存在しないと言ってもいい。
気づきに対して対応し続けることが、よりよい研修につながるのだから、カリキュラムを固定化することはこれからもないだろう。
どこで実施しても「1日があっという間だった」という感想をいただけるのは、このようなクライアントにぴったり寄り添ったカリキュラムを設計しているからだろうと思っている。
正直、決まったことを決まった形で実施し続けるのが研修としては楽なのだろう。
「このカリキュラムでこんな効果があります」と主張することも可能だろう。
だが、私にとっては嘘なのである。
「この条件で、このカリキュラムでこんな効果がありました」とは言えても、「あります」とは言えない。
条件が違うからだ。
私の講師としての強みは、研修を設計する気持ちと力と、それを現場で柔軟に組み替えながら実施できることだと思う。
これからもその強みを活かし、鍛えて、満足いただける研修を作り続けていきたい。