今年の31日間の新人研修も、中間地点を折り返して少し経つ。
以前にもブログに書いたとおり、今年は徹底して「座学で教える」ことをしていない。
それは続けており、受講生も「普通の座学」がなくてもなにも文句を言わないどころか、逆に座学があると文句(?)を言うぐらいになっている。
度重なるグループワークと、自ら学ぶ姿勢の徹底により、ざっとテキストの流れを説明して、方針を話すだけで、テキストを読み、調べ、試してみるという学習のスタイルが定着している。
仲間同士で教えあう姿も当たり前のものであるし、かといって教えすぎないことの意味も、すべての受講生が共有しているために、誰かが教えすぎてしまうという光景も(最初の頃はあったが)今はもうなくなっている。
講師まで来る質問も極端に少なく、仲間同士で解決しようとするために、自ら学んでいる時間には、ほとんど質問が来ることもない。
たまにこちらから出向いて行かないと、話すチャンスをなくしてしまうのではないかと思うぐらいの集中力である。
もう一つ、今年の研修ではより強い「参加意識」を求めている。
座学と自ら学ぶことの選択を受講生にゆだねたのも、参加意識を高めることが1つの目的である。
他にも、受講生から研修に対しての要望をもらい、それを活かすように心がけている。
そのような要望の1つがコミュニケーションシート対応後の5~10分の自由時間である。
毎朝、30分ほどかけて前日のコミュニケーションシートの対応を行っているのだが、その後に私のコメントや仲間の書いたものを元に、その日の行動方針を話し合ったり、問題解決策を練ったりするための時間が欲しい、との要望から取り入れたものである。
話し合いの様子によって時間を延ばしたり縮めたりはするが、前日の反省と成果を反復するにはとても有効な時間となっているようである。
もう一つ、プレゼン技術を高めるための3分間スピーチを行うことになった。
おもしろかったのは「やりたくない」という声を上げる受講生が全くいなかったことである。
それどころか、より多くやりたい、という意見が出るほどで、よりよく伝えられるようになりたい、という意識がとても高くなっているのに私が驚いたぐらいである。
学びたい気持ちというのはおもしろい、とあらためて思った。
小さなきっかけを与えるだけで、どんどん学びたいと考え、勝手に学んでいってくれる。
緊張を切らさないための講師の意地悪にも果敢に立ち向かってきてくれ、こちらが期待する以上の成果を出してくれる。
今年の研修は、昨年よりも20日も短い上に、カリキュラムの内容の複雑さは増している、というかなり厳しい環境であったが、知識を知ることではなく理解する事を求め、技術に加えてさまざまなヒューマンスキルについても考えることを求め続けた。
それを実現するために、より強い参加者意識を作り、自主的な活動時間を確保するために座学をできるだけなくす、という方針を立てて実施してきたが、ぐったり疲れてしまい、動けなくなる人が出てくるぐらいに集中し、学ぶことを続けてきてくれた。
その結果、時間の密度は今までになく高くなっている。
私の中で少しマンネリになりつつあった「新入社員研修の形」を、今年の環境と受講生達が壊してくれたようである。
もちろん、自主性に任せてしまっていることの弊害も出てしまっていることも否めない。
その1つの例が、学びたい、学ばなければ、という気持ちが空回ししてしまっている人がいることである。
例年、そういう傾向のある受講生がいるのだが、ステップバイステップをおろそかにし、少し先のゴールに目が行ってしまっている。
学ぼう、学びたい、という意志は非常に強いのだが、その気持ちが焦りになり、足下をおろそかにしてしまい、不安から動けなくなるパターンである。
決して分からないわけではない。
気持ちを落ち着かせて、1つづつ積み上げることの意味を納得すれば、大きく成長してくれるであろう。
来週からは、その気持ちのサポートに力を入れていきたい。
泣いても笑ってもあと2週間である。
限られた時間の中で、ぎりぎりの課題を提示してより密度の高い、効率の良い学習が進められるよう、考え続けていきたい。
あと2週間のあとに、何があるのだろうか。
楽しみである。