私が実施している研修は、スキルコーチングの考え方に基づいている。
一般的には、コーチングというとメンタルコーチングであることが多いだろう。
傾聴と共感で信頼感を作り、質問により相手の考えを引き出していく、という手法である。
答えはクライアントの中に、という言葉がそれを象徴的に示している。
私の実施しているスキルコーチングは、メンタルコーチングの考え方とテクニックをベースとしているが、伝えたい内容をあらかじめ想定し、適切な課題により気づける環境を作り、気づきを促すところが違う。
スポーツのコーチが技術を学ばせるのに使ったり、私のように研修の講師が何かを学んでもらうのに使うことができ、とても有効な手法である。
スキルコーチングでは、課題がメンタルコーチングでの質問の役割を果たすと考えれば、おおむね間違いはないのだが、課題が学んで欲しいことに直結するため、メンタルコーチングの質問より、スキルコーチングの課題のほうが多くの専門知識と経験を求められるように感じている。
特に研修で使う時には、一つの課題に結構長い時間をかけることが多いので、課題の設計と事前のシミュレーションなど、準備を周到にすることになる。
課題を考える際には、まず、身につけさせたいスキルを想定する。
想定できたら、そのスキルを分解していく。
例えば、コーチング、という大きな単位でものを考えた場合、以下のような感じになるだろう。
「考え方」
「テクニック」
「理論」
さらに細分化する。
「考え方」
「相手の気持ち」
「自分の気持ち」
「モチベーションが高くなるとき」
「モチベーションが低くなるとき」
「言葉の選び方」
「質問されたときの頭の働き」
などなど・・・
「テクニック」
「傾聴」
「言葉による傾聴」
「質問による傾聴」
「動きによる傾聴」
「姿勢」
「視線」
「うなずき」
などなど・・・
などなど・・・
「共感」
「言葉による共感」
「質問による共感」
「動きによる共感」
などなど・・・
「理論」
「傾聴の心理学」
「信頼感」
「モチベーションの種類」
などなど
このように、細分化していくといくらでもできるのだが、これらを学ぶべき順に並べ替え、一つを選ぶか、いくつかをまとめるかを考え、それに気づけるような課題を構築していくことになる。
課題は複数回で一つのものを学ぶように構成することもあるし、逆に一度で複数の項目について気づけるようにも設計できる。
学ぶことの、大きさ、重要度などによって適切な構成を考える。
このような考え方をしていくので、学ばせる内容が分かりさえすれば、完全に知っているわけではないことでも対応が可能なのが、素晴らしいところである。
私自身が細かいことを全て知らなくても、本質さえ押さえておけば、細かいことは受講生の方が勝手に見つけていってくれる。
コーチングの基本である「クライアントの中に答えがある」というのが、ここで出てくる。
あらかじめ想定している枠内で気付かせている、というのは確かなのだが、実際には、講師の想定を越えた内容を身につけてくれることも珍しくない。
スキルコーチングのスキル(少しわかりにくいが)は、ものを学ばせるためのスキルであり、多くの分野に適用が可能である。
それは、技術の伝承などという分野にも役に立つし、学校の勉強にも役に立つし、新規の技術の習得にも有効であるし、意識を変えることもできるので、ヒューマンスキルの向上にも有効である。
そして、育てようとしている人間よりもさらに先に行ってくれたりもする。
ぜひ、多くの方に、このスキルコーチングの技術を身につけて欲しいと思う。
身につけることができれば、私がそうであったように、きっと世界が変わって見えることだろう。