毎年の研修でも、ラグビーのグラウンドでも思うことは、人の持っている能力のすばらしさである。
研修や練習では、みんないろいろなことができるようになっていく。
だが、私の研修ではほとんど教えない。
グラウンドでも「もっと速く」などと言っているだけで、どうしたらよいのかなんて言いはしない。
でも、みんなできるようになっていく。
だから、彼ら、彼女らの成長は、私が講師やコーチでいるからではない。
それぞれの人が持つ、本来の力が発揮されただけなのだと思う。
今の時代の教育、指導の多くは、型にはめ、可能性を奪うことが多い。
伝え聞く教育現場の事例からは、そのようにしか感じられないし、よくグラウンドで目にする「指導」もそうである。
人を信じ、本来の力を発揮させれば良いだけなのに、何故そうしないのか、とても不思議である。
講師やコーチは、きっかけと気づくチャンスを与え、少し背中を押す以外にすることはない。
場合によっては、方向を示すことはあるだろう。新人研修や初心者に対するコーチングでは、必要な最低限のティーチングも大切である。
だが、自分で動き始めたら、信じて見守ってやればいい。
私の研修では「ていねいに教えてくれてありがとう」などという感想は出てこない。実際に教えてないのだから、当たり前である。
代わりに出てくるのは「多くのことを学べた」である。
必要以上に、教えてはいけない。
それはチャンスと自主性を奪う。
動き始めたら、信じて任せなければいけない。
そうすれば、その人の本来の「チカラ」が発揮されるようになる。
信じる力こそが、育てる力であることを、経験を重ねるごとに強く思うようになる。
コーチング研修で知った「コーチングとは待つことだ」という言葉を、日々、重く感じるようになっている。