実験

今年は研修に関して一つ大きな実験を行うことができた。

ちなみに、実験というのは行き当たりばったり試すことではない、というのは言うまでもない。
「こうすればこうなるはずだ」という仮説を立て、その仮説を実証するために段取りをし準備をして実行し、結果を観察するのが実験である。

今年できた実験というのは、私以外の講師の方に研修の現場に出てもらい、私が立てたカリキュラムに基づき、私の考えるやり方で研修を行ってもらう、というものだ。

私の役割は、以下の4点である。
・全体のカリキュラムの流れを作ること
・講師の方に研修の進め方をお伝えすること
・日々の研修の中で日報を見てアドバイスをさせていただくこと
・必要があれば進め方の相談に乗ること

研修の基本的な方針は、私のいつもの方針、つまり、考えさせ、グループワーク主体に進めるというやり方で、現場に出てくださる講師の方も、そのような研修は初めて、という状態だった。

現場に出ていない私には、その場で発生しているさまざまな事に対処することはできないので、現場に出ていただく講師の方に現場をお任せするしかない。
私は、発生するだろう変化を予測したり、起きたことをコミュニケーションシートから読み取ったり、講師の方からお話をうかがったりしながら、ちょっとだけアドバイスをし、後は見守っている、ということしかできない。
研修を始める前には、本当にできるのだろうか、という不安もあり、場合によっては、日々のカリキュラムを事細かに設定しなければならないかも、とか、日報のフィードバックの台本を書かなければならないかも、と考えていたのだが、本当に幸運なことに、よい講師の方との出会いにも恵まれ、私の想定していた中でも必要最小限のサポートで研修の現場を回していただくことができた。
そして、その大きな実験である研修が先日終了した。
段取りをし、実施したなら結果を観察しなければならない。
私は現場にいないために直接的な観察の手段は限られる。
使える情報は、日々の日報と見に行けた成果発表会、クライアントの反応と講師からのフィードバックである。

それらを総合して判断すると、今回の実験はまずまずの成功を収めたと言ってよいのではないかと思う。

もちろん、段取りと実施の問題や、突発的なトラブルもあり、完全に満足すべき結果が出た、とは言えない。
だが、それでも、仮説の最低限の証明はできたのではないかと思う。

現場で講師をしてくださった方は、これまでにも講師経験のある方だった。

その方が「受講生が自分で考える形の研修のすごさを実感しています。」「よくここまでできるようになってくれたと思います。座学メインでやってたらどうなってたのか怖いです。」という感想を話してくださった。
今回証明できたと考える仮説は次のようなものだ。
「適切な課題と、グループワークの機会と、適切なモチベーションと、必要な時間。これを与えれば人は勝手に成長してくれる。」
つまり、私がいつも実施している研修の内容なのだが、私が講師でなくてもきちんと結果が出るのだ、ということが証明できたのだ。

これまでは「長谷川さんだからできる。」という言われ方をすることがあったが、決してそんなことはない、とこれからは自信を持って話すことができるということだ。
適切なカリキュラムとグループワークの機会は形として準備できる。
必要な時間も同じである。

あとは、講師として「適切なモチベーションを保つスキル」があれば、目指す研修はできそうだ、ということを実証できた今回の研修は、私にとってもとても有意義なものであった。

講師の方は「モチベーション高く保つのを意識するのは大変でした。」と言われていたが、一生懸命取り組んでくれた。
私からのアドバイスも多少役に立ったのかもしれないが、それにより、研修が成果の出るものになったのだろう。
これ以降も同じような研修をする機会があるかもしれないが、その時にはもう少し自信を持って取り組むことができるだろうと思う。
今回の成果は、1にも2にも現場で大変な研修に取り組んでくれた講師の方と、初めての研修を自由に進めさせてくださったクライアント、そして仕事を紹介してくださった研修会社さんのおかげである。

関係する多くの方に、感謝したい。

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