研修講師をやっていると、研修の効果について考える。
研修で期待される効果には次のような段階があるのではないかと考える。
1:ただ知る。
例えば「コーチングという技術が存在する」というレベルの知識を得るのが該当する。
技法についての知識を得る、というのも含む。
このレベルでは、極端な話、本を読むのと大差ない。
2:学びたいと思う。
知った結果、素晴らしいと思い、自分で学びたいと考える。
3:体験により理解する。
「腑に落ちる」という経験をすることにより、「知る」とは次元の違う理解を得る。
4:具体的な行動設定をする。
学ぶために具体的な行動目標を設定し、行動を始める。
5:できるようになる
本当に理解し、スキルとしてできるようになる。
今の私の講師スキルでは、3までは問題なくできることが多い。
4も可能である。
だが、5をクリアするにはどうしても訓練が必要である。
そして訓練には時間が必要である。
IT系企業の新入社員研修のような集中研修は多くの場合2ヶ月から3ヶ月程度である。
大手企業では6ヶ月の新人研修などがある。
こような集中研修を2~3ヶ月以上続けられる研修であれば、多くの5の「できるようになる」を期待できるし実績もある。
だが、それ以外の研修は、1日、2日、3日などというものが多い。
私が研修で目指すところは5の「できるようになる」である。
だが、実際問題としては、訓練の期間を確保するのはむずかしい。
そうなると、新入社員以外の研修において、5の「できるようになる」は実現不可能なのだろうか。
そんなことはない。
鍵は「毎日集合研修を行う必要があるわけではない」である。
訓練が継続できさえすれば研修の役割を果たすことができる。
最初に集合研修を数日間行って、4の「具体的な行動設定をする」まで達する。
その後は、2週間に一度程度の集合研修を3~6ヶ月間続ける事で効果的な訓練ができる。
その結果として5の「できるようになる」が実現できるだろう。
このような研修を実施するにあっては、実施する講師として、マネジメントの難しさや実施メニューの設定のたいへんさなど、いろいろな困難がある。
だが「できるようになる」研修のためには、避けて通ることはできないことなのだ。
だから、やるしかない。
研修講師として必要なのは、教える内容を誰よりもよく知っていること、ではなく、学んでもらいたいという強い気持ちと、それに対する覚悟なのだろう。