つながる瞬間(とき)

よく研修でこんな話をする。

「それぞれの知識は、最初は島です。
一つ一つの分野の知識を膨らませていくことで、どんどん島が大きくなります。
島が一つではなく、複数あって、それぞれの知識の島を膨らませていけば、そのうちに島と島がつながり、大きな大陸になります。」

これは、コンピュータの世界で仕事をしてきた私の実感である。

ある分野での知識と、他の分野の知識がつながり、一気に全体が理解できる瞬間、というのがあるのだ。
そして、つながるものが多くなれば、より多くのものが見えるようになる。

私は研修に臨む際に、前の日に練習をしたりすることがある。
風呂場で自分の声を聞きながら、次の日に話す内容を実際に声に出して話したりするのだ。
特に難しい受講生からの質問があった場合や、初めて実施するグループワークのインストラクション、そんなときにはほぼ毎回、そのような練習をしている。

それも一度話しておしまい、とはならない。
言葉を換え、順番を変え、何度となく繰り返す。

カリキュラムを考える際もそうである。
毎回同じグループワークを入れても良さそうなものであるが、同じテーマでも実施方法を考えてみたり、導入のインストラクションをあらためて考えてみたりする。

何度も使っている課題も、変えられるものなら良いものに変えたい、と思ってしまう。

そんなことをしながら研修に臨むので、研修がある前の日は、だいたい夜が遅くなる。
落ち着いて考えれば、そんなに必死にならなくても、と思うし、他の人にも同じようにしてください、とも言えないのだが、私自身にとっては、それが当たり前のことで、なんの疑問も持たなかった。

だが、落ち着いて考えればこんな質問が出てきてもおかしくない。
「なぜそんなにがんばれるのか?」

前回「芸」という題でブログを書いた。

その中でも書いたが、アンサイクロペディアに載っていた言葉を見た。
そして、理解できたことがある。

私の中では、講師をして、よりよい研修をすることが「芸」なのだ。
その芸を磨きたくて仕方がない。

私の芸は、受講生に成長をもたらすことである。
ならば、そのための工夫はいくらでもしたい。
それが、私の芸を磨くことになるのだから。

これが私が時間を惜しまず、研修の準備をする理由なのだ、と。

私は職人気質が強い。

プログラマの時にもいろんなことができるようになりたくて、仕事が終わって家に帰ってもプログラムを書いていた。
陶芸を始めたときもそうである。時間があれば10時間以上ろくろに向かい続け、それなりに挽けるようになった。
講師をしても、同じように「技」を磨き、できるだけ高い技術を身につけたい。

私にとっては、プログラムも、陶芸も、講師も同じ事なのだ。
すべて、技であり、芸なのだ。

考え続けていると、ふとした瞬間に回答が降ってくる。
今回、そんな感じで、私の行動と感じていることが、明確に言葉でつながった。

言葉にできれば、理解できるし、伝えることもできるようになるし、伝わらないことも理解できるようになるだろう。

考え続けることは大切である。
考え続け、知識を求め、自分を見つめていれば、これからも多くのものがつながっていくにちがいない。

どこまで行けるか分からないが、少しでも大きな知識の大陸の上で考えられるようになりたい。
それまでがんばって、新しい島を見つけ、島を大きくすることを続けていきたいと、心から思う。

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