Archive for 2013年3月14日

Takanori

信じている

前のブログにも書いたのだが、今年の新人研修には社会人基礎力というヒューマンスキルの要素が取り入れられた。

カリキュラムの中では、当然のように講師がコメントをする必要があるのだが、そのコメントがマニュアル化されている。

私は過去の経験から、講師のコメントは、講師の考えていることを講師の言葉で語らなければならないと思っている。
そうでなければ、受講生は言葉を聞いてくれないし、受け入れてもくれない。
ましてや、納得などしてくれないだろう。

そのような観点から、そのようなヒューマンスキル研修の経験のない講師仲間に、自分の言葉で語るほうがいいよ、という話をしていたら、カリキュラムを作成した講師の方から注意を受けてしまった。

私のようなヒューマンスキル系の経験のある講師ならば自由にやればよいが、他の講師は技術系の講師であるから、マニュアル通りやるように、とのことであった。

これを聞いて、2つの問題があると感じた。

一つは、技術系の講師であるからヒューマンスキル系の講師はできないだろう、と判断していること。
これは、大変失礼なことではないかと思う。
ヒューマンスキル研修の講師の経験はないかもしれないが、社会人としての経験はある。
その経験を元に自分の考えを伝えられるようにすれば、新人に対してのヒューマンスキル系の研修の実施も可能だろう。

もう一つは、ヒューマンスキル系の内容において、講師が信頼されない場合の問題である。
マニュアルに書いてある回答で、受講生が納得できない場合に、講師がどう思われるか、というのが大きな問題なのである。
1日や2日の研修であれば、そんなものか、ですむかもしれないが、いつも納得できる回答をできない講師を受講生がどう思うだろうか。
技術はできても、社会人の基礎力はない、と判断された講師の言うことを、受講生が聞くだろうか?
また、信頼してくれるだろうか?

新人研修では30日から50日にわたって新入社員と向き合い続けなければならないのだ。
その中で、社会人の先輩として信頼されないということは、研修そのものの成否に影響しかねない問題である。

そのような問題を回避するには、たとえ未熟であっても、受講生と真摯に向かい合い続けるしかない、と私は考える。

そもそも、技術職だからヒューマンスキルはできるわけない、などと考えるぐらいなら、ヒューマンスキル系の研修などするべきではないのだ。

だが、私は講師として働こうとしている方の講師としての姿勢を信じる。
実際に見ていても、みなさんは非常な努力をされている。
その結果を信じずに、研修の講師などしていられない。

現在、講師仲間の方に対して、私の経験を元にして、少しでも自分の言葉で語れるようになるグループワークをゲリラ的にさせていただいている。
自分と他人の経験から、自らの中のイメージを膨らませて明確にしていくことが目的である。
頼まれた仕事でもないので、私のお節介で純粋なボランティアであるが、全く手は抜いていない。

終わった後には、イメージが明確になった、自身の中にあるものから社会人基礎力を理解していく糸口を見つけることができた、社会人基礎力のより深い内容について理解することができた、自然に身に入ってきたので、時間があっという間に過ぎた、などの感想をいただく事ができた。

すぐにはヒューマンスキル系の研修を上手にはできないかもしれない。
できないことにより、研修中に崖っぷちに立つことがあるかもしれない。

私は初めての研修で遭遇した崖っぷちから、ワークショップやコーチングという「知識」に救われた経験がある。
知識は、崖っぷちでつかむべき藁になり得ることを知っている。

今回の私のお節介がその知識となり、どなたかの崖っぷちからの生還に役に立てれば、これ以上の幸せはない。

Takanori

社会人基礎力を身に付けるには

今年から、私の参加する新人社員研修に社会人基礎力の要素が取り入れられた。
私の場合は、すでに10年ほど、ヒューマンスキルの向上を目指した研修を続けているので、今さら感があるが、予備研修には参加している。

そのカリキュラムを聞いているのだが、国語のテストを解き続けるような感覚である。

確かに、これで意識はすることはできるだろう。
うまくいけば、社会人基礎力の12要素を覚えることもできるだろう。

だが、できるようになるか、というとはなはだ疑問である。
もちろん、意識することで変化することもある。
ただし、「こういうのがあるよね」というレベルの意識では、変わらないだろう。
変わるためには「変わりたい」という意識を持たなければならない。

すべての講師が勉強もせずに実施するには、こういう方法しかないかもしれない。だが、そもそもシチュエーションが違えば、答えとして用意されているものが、そぐわないことになる。
その説明について反論があったら?という質問があったらしいのだが、そういう反論は出たことがない、との回答であった。

どうも、全体を通して、テストのためのテストであり、本当に社会人基礎力というヒューマンスキルを鍛えようとしているようには思えない。
私の経験からはヒューマンスキルは、実際の状況の中での判断をし、行動し、フィードバックを受け、次の行動を考えることを繰り返すことでしか、身につけることができない。

考えて、行動し、フィードバックを受け、次の行動を考える。
つまり、PDCAサイクルを回すのだ。

社会人基礎力は、プロジェクトベースでの教育では力は身につかない、という話もあった。
ものを作り上げることだけを目的としたプロジェクトでは、そういうこともあるだろう。
だが、プロジェクトが教育目的で実施され、ファシリテーターにより進行すれば、間違いなく力はつく。
これまで、そのような事例をたくさん見てきているから、自信を持って言える。

資格試験にこだわると、本質が見えなくなる。
それをよく感じられる予備研修であった。

Takanori

繰り返しと変化

研修の仕事には、2つの面がある。

一つは何度も同じ事を繰り返す必要がある、ということと、もう一つは常に変化しなければならないということである。

新人研修などでは、技術研修であっても毎年同じような内容の研修を繰り返すことになる。
技術的な面でもそうであるし、毎年ヒューマンスキルの向上を目指すことも同じである。
同じクライアント、同じ日程で実施するとなれば、なんとなく「昨年も同じ事をしたなぁ」と思う感じになったりもする。

1日や2日の短期の研修であれば、同じクライアント、同じ内容であれば、実施する度に同じカリキュラムで実施することになるので、何度も同じような話をし、何度も同じグループワークを実施することになる。

研修の仕事というのは、本質的に同じ事を繰り返さなければならないことが多いのである。
私のように、基本的にオーダーメイドで研修を実施することを前提としていても、そうなのであるから、固定カリキュラムで実施している場合にはなおさらであろう。

だが、そのような同じ事を繰り返しているように見える研修でも、その中での変化を目指す必要がある。

技術的な研修であれば、最新の技術的な内容に追従しなければならないし、講師自身の技術的なスキルの向上も目指したい。
伝えるべきものが変わり、講師のスキルも向上すれば、それに合わせて実施内容も変わっていくだろう。

もしも講師のスキルや技術的な内容が変わらなくても、受講生は毎回違う。
受講生に寄り添った研修を行えば、それによっても研修の内容が変わっていくはずである。

コミュニケーション研修や、ヒューマンスキル研修などでも技術研修と同様である。

ヒューマンスキルについても理論的なものは常に進化しているし、それを学ばせるためのさまざまな手法も開発し続けられている。
講師としても、それらの新しい学習手法に習熟することができれば、よりよい学びのためにそれを使うべきだろう。

つまり、研修というのは本質的に同じ事を繰り返す仕事なのだが、よりよいものを提供し続けようとすれば、変化し続ける必要がある仕事でもあるのだ。

評価を受けた同じものを繰り返すことは、楽である。
クライアントからすれば、実績があるという意味で安心であるのかもしれない。
営業的にもそのほうがよいのかもしれないし、私も、求められれば、過去に実施したことのある内容をそのまま実施することもあるだろう。

だが、伝える側が変化し続けることは、伝える側の誠意なのだろうと思う。
それが、よりよいものを提供し続けることにつながるのだから。

こういう言葉もある。

「学ぶことをやめたら、教えることもやめなければならない。」

ロジェ・ルメールというサッカーの元フランス代表監督の言葉である。

育成にかかわるものとして、肝に銘じるべき言葉であろう。